2.キャラクターの管理
(5)調査

誰もがオリジナルキャラクターを、すぐに商品化して販売したり、その商品をホームページに掲載したいと思うでしょう。
しかし、そのキャラクターは他人の権利、たとえば他人の「著作権」や「商標権」を侵害していないでしょうか?
「誰かのキャラクターを真似ていないし、オリジナルキャラクターだから大丈夫」と思っても、キャラクターを使用するにあたり、事前に次のような調査が必要です。

◯他人の著作権の侵害にあたるか
(1)著作権侵害(複製権侵害)とは?
著作権のうちのひとつ、「複製権」について例にとって見てみましょう。「複製権」とはどのような権利か、条文を見ると次のようにあります。

〈複製権〉著作者は、その著作物を複製する権利を専有する(著作権法 第21条)。

これは、著作者(=著作権者)がその著作物を複製する権利を独占する、という意味で、権利を持たない者は、著作権者(複製権を持っている人)の許諾なく、勝手に著作物を複製することができません。もし、勝手に複製をしてしまえば複製権侵害となり、差止めや損害賠償を請求されます(第112条)。

(2)複製権侵害となる行為
この場合の「複製」とはどういう行為をいうのでしょうか?
裁判では2つの要件が必要であると示されました。

①既存の著作物に依拠していること
②その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製すること
(ワン・レイニーナイト・イン・トーキョー事件)

①「依拠」とは「既存の著作物をもとに創作すること」をいいますが、その既存の著作物にアクセスし、実際に「知っていたか?」ということが問題となります。
②の要件は少々難しい言い回しですが、再製(コピーや新たに創作)したものが「既存の著作物」を感じられるものであるか?ということが問題となります。

(3)依拠
「依拠」とは「既存の著作物をもとに創作すること」ですので、もし、既存の著作物をもとに創作したのでなければ、「依拠」したとはいえません。たとえば、あなたが偶然、Aさんの創作した著作物を知らずに、その著作物と同一の著作物を創作したとすれば、あなたはAさんの著作物を「知らずに」創作しているので「依拠」にあたらず複製権侵害とはなりません。
しかし、著名なキャラクターなどについては「知らない」と反論するのが困難な場合もあると思います。著名なキャラクターについては、事前にその存在を調査し、客観的に似ていないかどうか、判断することが重要です。

(4)その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製する行為
著作権の侵害となるのは、複製された著作物が「依拠」したものであるだけではなく、「その内容及び形式を覚知させるに足りるもの」でなければなりません。
既存の著作物と複製された著作物の関係については、以下の4段階があると判示されています。

①既存の著作物と「同一の場合」
②既存の著作物に「修正増減を加えているがその修正増減について創作性が認められない場合」
③既存の著作物の修正増減に創作性が認められるが、原著作物の表現形式の 本質的な特徴が失われるに至っていない場合
④既存の著作物の修正増減に創作性が 認められ、かつ、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われてしまっている場合
(京都地方裁判所判決 平成7年10月19日 、平成6(ワ)2364)

①と②については「複製権侵害(第21条)」となります。
③については複製権侵害とはなりませんが、「翻案権(第27条)」の侵害となる可能性があります。
④は、もはや全く別の著作物を創作した、といえるので、著作権侵害とはなりません。
つまり、既存のキャラクターを参考にしても、もとのキャラクターの本質的な特徴が失われるほど修正されていれば、別の著作物であるということになります。
これらの判断は、その著作物の種類、環境などによって変化します。客観的な判断は専門家に相談されることをおすすめします。

◯他人の商標権の侵害にあたるか

(1)商標としてキャラクターを使う場合
キャラクターを商標として使う場合については、商標法のページでも述べましたが、キャラクターそのものやキャラクターと文字の組み合わせは商標となり得ます。
逆を考えると、他人がそのような商標を登録している場合もあり得るのです。
もし、あなたのキャラクターが、他人の登録商標、または登録商標に含まれるキャラクターに類似している場合には注意を要します。
その登録商標の同一・類似の指定商品・役務について、登録商標と同一・類似の商標を使用すると、商標権侵害となってしまうからです(商標法 第25条)。

(2)キャラクターのネーミング
キャラクターのネーミングについても、商標調査を行う必要があります。ゲームやアニメーションの中では、どんな名前で呼ばれていても「登場人物の名前」は商標として機能しないので、大きな問題になりませんが、商品のパッケージやネームタグにキャラクター名を表示すれば、「商標」として機能します。
そのような場合、思わぬ商標権の侵害となる場合があるので、注意が必要です。

(3)商標調査
商標調査は特許庁のJ-PlatPatで調査をすることができます。登録商標が格納されたデータベースで、誰でも検索することができます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

しかしながら、キャラクターは文字商標と異なり、図形等商標としての調査が必要になります。図形等分類のどの範囲を調査するのか、指定商品・役務はどの範囲まで調査すべきか、などの判断は、専門的な知識を必要としますので、弁理士などの専門家に依頼して調査することをおすすめします。

翻案権とは
「翻案権」とは、著作権のうちのひとつで、著作物を独占排他的に翻案する権利をいいます。

「翻案」とは、「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現形式を変更して新たな著作物を創作する行為」であると解されています(江差追分事件)。

「翻案」の具体的な例としては、
・二次元のキャラクターをもとに、ぬいぐるみなど立体物を創作する行為
・小説を映画化やゲーム化する行為
・一話完結形式の漫画の連載において同一のキャラクターを用いて新たな続編を創作する行為
などがあげられます。例を見ると「具体的な表現形式を変更」という意味がわかると思います。

「翻案権も独占権ですので、翻案権者に無断で著作物を翻案すると、原則として翻案権の侵害となります。